硯 箱 の 筆

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いちご

昼過ぎ、子供の帰宅と一緒に苺がやってきました。

娘の友達のおばあさんが趣味で作っている(趣味って言っても、ビニールハウスまである本格的な)畑で取れた苺です。
その子の伝言によれば、「もう食べるにも粒は小さいし傷もあるから、ジャムにでもして食べて」と言うことらしく。

「・・・要するに作れと?」
「おばちゃんなら作るだろうって言ってたよー」

・・・この子のおばあさんに私は一体どう思われてるんだろう。
そりゃ、苺ジャムは作れと言われれば作れますけども。
でも毎回、緩かったり、固かったりして、加減がヘタなのにー。

苺は大きいパックにもりっと二つ、計ったら1.4Kgありました。
とにかく即ヘタを取って砂糖に漬け込んで。
砂糖は重量の半分ぐらいが基本なんですが、食べたら甘かったので4割に。
でかいボールにたっぷりあって、一瞬くらっとしました。

結果を言えば、無事出来上がりました。
砂糖の一部を黒糖にしたら、妙に黒いジャムになりましたけど(笑)
そして砂糖のせいか、苺のせいか、甘いです。
おかしい。砂糖、4割しか入れてないのに。
あまり減らすと日持ちしないしーと思ったのが敗因かしら。
明日から、一生懸命消費します。
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コトコトなのか、グツグツなのか。
鍋の中で泡を噴くその物体を眺めて。

「これ、ホントに喰えんのか・・・?」

佐助は途方にくれていた。



事の始まりは、スーパーで偶然独眼竜の右目に会ってしまったことから始まった。

片倉小十郎という、伊達政宗の家庭教師だかを長年勤めている十ほど年嵩のこの男と佐助は、趣味(?)が同じ調理全般だということを知ったときに仲良くなった。
仲良くなったとはいえ、特に何をするわけでもなく、たまにこうやって偶然ででも会えば簡単に会話をし、学校であったこと(主に政宗がしでかしたこと)を話したりする程度だ。

そして今日もたまたまパンのコーナーでなにやら唸っているのを見かけて、いつも通り軽く声を掛けた。

「片倉さん、久しぶりー」
「あん?」

どこの極道かと思わせる低い声(ドスが効いたとでも言うべきか)と、一睨みで人一人ぐらい殺っちゃえそうな座った目つき、更に加えて、どこの抗争で付いた傷ですかー?と聞きたくなる頬の一文字を隠さず曝した顔が振り返り、何だ猿飛か、と少しばかり視線が緩む。

「何悩んでるんデスか?」
「・・・食パンの枚数だ」

四枚、五枚、六枚と、ここの地元のパン屋がスーパーに卸しているらしい『無農薬・無添加』と大きく書かれた、通常のパンより値段が高めの食パンを前に本気で悩んでいる。

『政宗様にヘタなもん食わせられねえからな』

が口癖らしいこの男の、それでもそうと教えてくれた当の政宗はジャンクフードが好物という、まったく報われていない行為を、諦め悪く今日も展開しているらしい。

「・・・何枚切りがいいと思う?」
「・・・好みだろうけど・・・俺だったら六枚。でも、独眼竜なら五枚か四枚じゃない?」

しかし同情するような言葉を言うのは筋違いなので、素直に意見を述べる。
自分は六枚切りを二枚食べるのが限界だが、政宗ならば腹具合ではなく味だろう。
サクサクしている六枚切りより、中はふんわりしてる厚目のほうを好みそうだ。
ちなみに佐助はサクサク派で、しかも少しばかり焦げ目は多いほうが好みである。

「でもパン食なんて珍しくない?」
「苺が大量に取れてな。食いきれねぇで、ジャムにしたんだ」
「ああ、片倉畑」

噂に聞く広大な広さを誇るという畑は、政宗がその昔、俺とどっちが大切だ!?と詰め寄ったこともあるらしい、曰く付きの畑だ。
まさか難しいと聞く苺まで作っているとは思わなかったが、作れるものなら作ってしまえというスタンスで畑を管理しているこの男なら、何でも作ってしまいそうだとも思う。

「まあ手作りジャムっていいよねぇ。どーも俺様、市販品は甘すぎて食べらんなくて・・・」
「なら作りゃあいい。苺なら腐るほど分けてやる」

食べらんないから、朝は普通にバタートーストなんですーとは言わせて貰えず、引っ張られるように買い物をさせられ、車に放り込まれて、件の畑をこの目で見てたまげ、大量の苺を持たされ、そしてジャムのレシピまで書いてもらって、挙句家まで送られた。

「その通りに作りゃあ、食えるもんができる」
「あ、うん・・・アリガトウゴザイマス・・・」

嵐のような数時間を過ごし、自宅玄関前で黒く排煙を上げる車を見送る。
そしてその車がまったく見えなくなった頃に、ようやく正気になった佐助は、両手にどっさり持たされた苺を見て、レシピを見て、なんで!?と叫びを上げて───冒頭に至る。



「あー、と。アクはマメに取る。・・・取れるかっての」

ジャムは大き目のホウロウの鍋で作れと念を押されている。
さてそんなものがあったかとキッチンをひっくり返せば、自分は使った覚えのない鍋の中に、とりあえず条件を満たす鍋があり。
レシピの通りに煮込んでいけば、鍋の縁から溢れるほど盛り上がり、アクを取るも何も噴き溢さないようにするだけで必死である。
そうしてグツグツだかブツブツだかいう恐怖の苺ジャムの鍋は、もう目眩がするほど甘い匂いをあたりに撒き散らし、

「しかし良い匂いでござるな」

隣家の幸村を召喚した。

「・・・旦那は苺ジャム好きだったよね」
「ママレードの方が好きであるが、苺も好きだ。どうせなら、形あるうちに食べたかったが」
「もう時期が外れて、ジャムかジュースにしかならないのをくれたから、食べても美味しくないかもよ」

いやしんぼの幸村は、あたりに漂う苺を煮込む匂いが佐助の家だったことに心底驚いたらしい。
それでも嬉々として飛び込んでくるあたりが幸村で。
佐助がこもるキッチンを見て、あたりの匂いをかいで、それから対面キッチンの窓から離れない。

そうしてかき回す鍋の中身の苺は、確かに形こそ悪かったが、甘みはあっておいしいと言えるものだった。
その味をみて、分量から砂糖の量を減らしたぐらいだ。あまり減らすと日持ちがしないと指摘も受けたが、食べる自分の好みに合わせてこそだと思う。

「早くできぬであろうか・・・」
「アク取るだけで必死なのに言わないで・・・」

アクは、取っても取っても湧いてくる。
そのうち無くなるんじゃなかろうかと不安になるほどアクを取って、掻き回して。
アクがなくなって、とろりとすれば出来上がりだと書いてあるが、どれぐらいでとろりなのか、見当もつかない。
ぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつ・・・・・・
頭も一緒に煮えそうだ。

それでも鍋の半分ほどに煮詰まってきた頃、アクの姿はどうにか消えて本来の苺の赤い色が鍋に満ちる。
後はとろりだな、とろり。
木杓子を持ち上げては加減をみて、とろりを探す。

「そろそろでござるか?」
「・・・どうなんだろ。でもなんか、ちょっと重くなったかな?」

対面キッチンから覗き込み、鍋のぐつぐつ言う様を楽しげに眺めている幸村が、いそいそと食パンを焼こうと準備する。
どうやら出来てすぐのジャムを味見するつもりらしい。

「気が早いんじゃない?」
「しかし、もう出来そうではないか」

うきうきと楽しげに跳ね回っているのをみれば、咎める気も失せる。
その姿を失望させずにすみますようにと逆に祈る心地でくるくる混ぜて。

「片倉殿は親切でござるな」
「それは・・・どうかな・・・」

親切でないとは言わないが、親切だと言い切れる御仁だとも思えない。
主も謎な性格だが、従者も謎だよな、というのが、現在の佐助の心境だ。
そしてチーンとトースターが軽い音を立てて食パンを吐き出したのを、すかさず幸村が取りに行くのを見やって、もうこれぐらいでいいよね、と諦めに似た心地で火を止めた。

「うおっ。緩くないか、これは?」
「冷えたら固くなるんだって。熱いうちは多少緩くないと、ゼリーみたいになるらしいよ」

焼けたパンにたっぷりと塗る。
しかしジャムは熱く緩いので、スプーンで掬っての作業だ。
それでも綺麗に澄んだ赤い色は宝石のようで、我ながら初めてにしちゃ上出来じゃないの?と自画自賛を惜しまない。
その横で幸村の大絶賛も加わっての半お祭り騒ぎ状態になってしまったが、嬉しいものは嬉しいのだから、よしとする。

「味、どう?」
「甘くてうまいでござるよ!」
「・・・甘いの!?」

えー、砂糖減らしたのに!と鍋からスプーンでちょびっと掬って味をみれば、確かに甘い。
もしかすると、これって市販品より甘いんじゃないか!?

「うそーん・・・」
「・・・うまいではないか」
「いや、俺様、甘味を控えたのをね・・・」

作りたかったんだけどね、と。
呟く小声は、幸村の幸せそうなうまいの声に掻き消えた。


後日、きちんと瓶詰めされ小さな紙袋に手紙と一緒に入った苺ジャムを片倉小十郎は政宗経由で受け取り、すぐさま畑で苺を摘むと、そのまま猿飛家に飛び込み、ジャムの作成指導を行った・・・らしい。

「すぐ食うなら三割でも大丈夫だ」
「・・・あんた持ってくる量尋常じゃねぇじゃんか・・・っ」

苺ジャムの消費は幸村の肩に掛かっている。



おかしな話。

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